お気楽Mickの中国語・韓国語学習日記

独学で中国語と韓国語を勉強しています。

【中国語】「反正」について

副詞「反正」について書きます。

GRASグループ株式会社が運営する日本語圏向け統合型オンライン百科事典サイト 反正の意味 - 中国語辞書 - Weblio日中中日辞典 によれば、副詞「反正」の1番目の意味は「(多く‘不管(无论)…,反正…’や〔相反する意味を示す節+‘反正…’〕の形で,どのような状況の下でも結果は変わらないことを強調し)どうせ,どのみち,いずれにせよ.」とのことです。また、例文として、以下が紹介されています。

  • 反正狗嘴里吐不出象牙来,谁去听他!=どうせ悪人からはろくな話は聞けない,誰が聞きに行くものか!
  • 不管你怎么说,反正我不同意。=君がどんなに言おうと,どのみち私は不賛成だ.
  • 信不信由你,反正我不信。=信じようが信じまいが君次第だ,私はどうせ信じないけど.

これらの例文を見る限り、「どうせ、どのみち、いずれにせよ」を意味する副詞「反正」は、複文で使われる印象が多い印象を受けます。しかしながら、マンガでいくつかの口語用例を調べたところ、「反正」が単文で用いられることもあることを確認しました。

■例1

島耕作:会谈比预定的时间提早结束。反正还有时间干脆去看场电影好了。(打合せは予定よりも早く済んでしまった。時間が余ったので久しぶりに映画でも見るかな。)                                  弘兼憲史講談社発行「部長島耕作9」P4、許嘉祥訳 尖端出版発行「菁英族 部長島耕作9」P4
例えば、上記の独り言は、話し手は、打合せが予定よりも早く終わったので映画でも見ようかと思案している場面ですが、中国語訳文では、原文にない「反正」が後続文の冒頭にあります。

ここは、

「打合せが予定よりも早く終わった」

      ↓

「そのことがどうであれ(=打合せが早く終わったことが良かれ悪しかれ)」

      ↓

「映画でも見ようかな」

という意味のつながりになっているように思われます。

中国語訳のポイントは、原文には「どうせ、どのみち、いずれにせよ」に相当する単語が使われていないにも関わらず、中国語訳では、後続文の文頭に「反正」が使われている点です。

 

■例2

鈴鴨かつ子:今天我可以去找你吗?反正待会儿就要打烊了。(今日行ってもいいかしら?もうすぐ店閉めるけど。)

弘兼憲史講談社発行「部長島耕作9」P108、許嘉祥訳 尖端出版発行「菁英族 部長島耕作9」P108

また、上記の電話会話では、話し手は相手に対し、「今日行ってもいいか?」尋ねた上で「もうすぐ店を閉める」と伝えています。
この構造は、
「今日行ってもいいか?」
     ↓
「相手の返答がどうであれ(=来てほしい・来てほしくないのいずれであっても)」
     ↓
「もうすぐ店は閉める」
という意味のつながりになっているように思われます。
ここでも、原文には「どうせ、どのみち、いずれにせよ」に相当する単語が使われていないにも関わらず、中国語訳では、後続文の文頭に「反正」が使われている点がポイントです。
 

■例3

某社員:今野社长。黑岩常务和店会长久保山先生缺席呀。(今野社長。黒岩常務と店会長の久保山さんが欠席です。)

今野社長:缺席?算啦,反正今天的会议只是介绍岛专务而已。(欠席?まあええ。今日は島専務を皆に紹介するだけやさかいな。)

弘兼憲史講談社発行「部長島耕作11」P37、許嘉祥訳 尖端出版発行「菁英族 部長島耕作11」P37

上記の対話では、黒岩常務と久保山氏の2名が会議を欠席するという報告を受けた今野社長が「2名が欠席するのか?」確認した上で、「まあいい」とその事実を認め、さらに「今日の会議の目的は島専務を紹介するだけだから」と伝えています。
この構造は、
「あの2名は欠席するのか?それはまあいい。」
     ↓
「2名の出欠の影響がどうであれ(=2名が出席しようと欠席しようと)
     ↓
「今日の会議の目的は島専務を紹介するだけだから構わない。」
という意味のつながりになっているように思われます。
この例においても、やはり、原文には「どうせ、どのみち、いずれにせよ」に相当する単語が使われていないにも関わらず、中国語訳では、後続文の文頭に「反正」が使われている点がポイントです。
 
以上のことから、以下4点がわかりました。
  1. 「反正」は必ずしも「不管 」「无论 」「Verb不Verb」等に後続する複文でのみ使われるのではなく、単文でも使われる。
  2. 「反正」は、話し手自身の発言内の先行文だけでなく、話し相手の発言を受けて使うこともできる。
  3. 原文に「どうせ、どのみち、いずれにせよ」に相当する単語が使われていなくても、中国語訳文には「反正」が出現する。
  4. 「反正」には、「先行文の内容がもたらす影響等がどうであれ」という意味を表し、後続文につなげる役割がある。いわば、「反正」の役割は、話題の焦点(focus)を、先行文の内容から後続文の内容に移すことである。